はじめに物流業界で非常に重要視されているテーマである「デマンドチェーン」と、それを支える「商品マスター」のあり方について、深掘りした動画を配信しました。今回は、その動画の内容をブログ記事としてお届けします。ネットスーパーの事例を通じて、従来の物流や小売りの常識を覆す可能性を秘めたデータ基盤の重要性、特に商品マスターの改革に焦点を当てて議論しています。伊藤: 今回のテーマは、流通小売業の常識を逆転するデマンドチェーンを支える指標とデータ基盤についてですね。特に商品マスターの重要性が取り上げられているということで。小橋: そうですね。これは4NEXT株式会社さんの事例をもとに、ネットスーパーでの多多様な商品を扱う上でデータ整備がいかに必要か、特にマスターの重要性について語られている記事です。長井: 多分、マーケティングや数字に強い方が物流に入ると、こうなるんだろうなという視点が面白いなと思いました。デマンドチェーンという考え方小橋: この記事の核となるのは、従来の小売りの売り方ではなく、仕入れから販売までの「デマンドチェーン」という考え方です。サプライチェーンは供給者からエンドユーザーへ物が流れる流れですが、デマンドチェーンは消費者の需要を起点として、製造メーカー側へその需要をどう伝えていくか、という逆の流れを指します。インターネットを使ったネットスーパーでは、この顧客・消費者の需要をいかに正確に数字で捉えるかが非常に重要になります。伊藤: なるほど、消費者側からの視点なんですね。小橋: そのためには、DXの考え方で、システムが連携して数字を正確に捉え、在庫管理や調達を行っていく必要があります。長井: 今まで物流側も、「こういう情報があった方がいいよね」と分かってはいたけど、効果が見えづらいから放置していたことが、ここにきて大きな武器になってきたという印象を受けました。商品マスターの重要性小橋: 特に注目したいのは、やはりマスターの重要性です。物理現場に入って改善を進める中で、マスター情報がきちっと整備されていないと、物が今どこにあるか、何個売れているか、欠品しているかといった状況を数字で正確に捉えることができません。ネット販売だと、商品の重さや容積といった情報も重要になってきますが、そういった情報をきちんとマスターとして持つことが極めて重要だと感じています。伊藤: 商品マスターの改革って、今まであまり事例として聞かなかったんですよね。今あるデータをどう分析して活用するかの話が多かった気がします。でも、そもそもマスターに持つべき情報を変えていくというのは、会社にとっては結構怖くて、なかなか手がつけられない領域だと思うんです。そこに果敢に取り組んでいるのが素晴らしいなと。長井: イオンさんの納品率が96.何%という話も出ていましたが、そこまでいっていれば良いと思うかもしれませんが、イオンクラスになると、そのわずかな差でもかなりのロスになりますよね。そもそも、納品精度を可視化できている企業も少ないのが現状だと思います。注文したのに届かない、遅れるといった欠品は、慣れている僕でもストレスを感じるくらいです。小橋: データドリブンで分析を進める上でも、やはり根拠となるのは商品マスター情報です。従来の小売業のマスターは、バイヤーが仕入れるために簡易的に作成された、どちらかというと閉じた情報でした。そのため、人によって捉え方が違ったり、仕入れ先によってマスターが変わったりして、共通的・標準的に持つという考え方が意外となかったんですね。これが商習慣なのかもしれません。長井: そうそう、まさにその通りだと思います。昔はExcelやAccessで管理できるような、1行1個という感覚が強かったんですよね。小橋: しかし、今のネット時代、DX時代では、商品マスターは単に仕入れのためだけではなく、マーケティング情報とも紐づけられるべきです。お客様が今どんな商品を見ていて、どういう風に関心を持っているかといった情報も、商品を識別できるタグ、つまりマスター情報がないと取得できません。お客様の需要を捉えるためには、商品マスターのあり方自体が変わってきていると感じます。長井: 顧客の需要に対して必要な情報を取るために、マスターが整備されているかどうかがすごく重要ですね。小橋: さらに、物流の効率化を考えると、商品の容積(要石)や重量(ウェイト)といった情報がマスターにないと、複数の商品を組み合わせて積載率を上げたり、無駄なく運んだりといった物流設計ができません。バーコードなどは持っていても、荷姿(ケースでの容積・重量など)まできちんと整備されている企業はまだ少ないと思います。正確なマスター情報が可視化につながる長井: 先ほどイオンさんの納品率の話も出ましたが、ああいう数字もちゃんと可視化して改善につなげるには、やはり正確なマスターデータが不可欠ですよね。小橋: その通りです。そして、そのマスター情報を基に、最近流行りのAIなどで分析を行うにしても、マスターの質が悪ければ意味がありません。伊藤: ただ、こうして商品マスターに持たせたい情報がリッチになってくると、次の問題として「誰が、どこで、どのように入力するのか」という体制の問題が出てきますよね。例えばアパレルだと、バイヤーが全部最初に入力することが多いらしいんですが、彼らにとっては面倒で後回しになりがちだと聞きました。長井: そうなんですよね。結局、売るための情報をOMSに、在庫管理の情報をWMSにと分けて入れるんですが、みんな最低限の情報しか入れたがらない。CRMやマーケティングに必要な情報は後から膨らませていくはずなのに、商品マスターの作りが昔のExcel・Access時代の考え方から変わってない。小橋: アパレルの例で言うと、商品を企画したりデザインしたりする段階で、素材や商品特性、コンセプトといった情報を持っているはずなんです。でも、その情報が分断されてしまって、マスター入力担当者が改めて全部入力し直すとなると大変です。商品の企画段階から情報がずっと紐づいていくような仕組みになれば、負担は少なくなるはずです。部署ごとに必要な情報をアップデートしていく形が理想ですね。長井: まさに!普通のシステムならバージョン管理で情報がどんどん上書き・蓄積できるのに、マスター管理となるとExcelでしか見れないような文化が残っている。ここはすごくチャンスだと思います。柔軟なバージョン管理ができるシステムでマスターを作ればいいんです。伊藤: 誰が登録するかの問題は、商品企画から最終販売までのプロセス全体で、会社としてルールを決めて、情報が自然と生成されていく仕組みに変えていかないといけない気がしますね。小橋: 全く同感です。かつてSalesforceやKintoneが登場した頃、項目を増やしすぎて結局誰も入力できなかった、という失敗談もありました。あの辺りの設計が重要なんですよね。品番に意味を持たせなくてもいい長井: あと、未だに品番(商品番号)に意味を持たせようとする考え方の人も多いですが、僕はこれは不要だと思っています。例えば「2024年春夏モデルのトップスで、メーカーコードXX」といった情報を品番の中に詰め込もうとする。でも、仕入れ先が増えたりアイテムが増えたりしたら桁が足りなくなったり、体系が破綻したりします。小橋: そうですね。昔は店舗スタッフが品番を見て判断するのが一番早かったから、品番に意味を持たせるやり方が主流でしたが、データがリッチになった今は、リッチなマスター情報で管理すべきです。品番は単なる識別子で良い。古いやり方から頭が切り替えられていないケースは多いと思います。長井: その中間を取った、いい感じの考え方が必要かもしれませんね。まとめ伊藤: 今回は、デマンドチェーンの実現に不可欠な商品マスターの改革という、普段なかなか深掘りしないテーマについて、非常に勉強になる対談でしたね。小橋: はい。ネットスーパーのような新しい販売形態だけでなく、効率的な物流を実現するためにも、商品マスターの整備は極めて重要だということが改めて分かりました。デマンドチェーンという視点からマスターを見直すという点は、非常に参考になったかと思います。長井: 情報の入力体制や、バージョン管理といったシステム的な視点、そして品番の持ち方など、様々な角度からマスターの課題と可能性が見えてきました。小橋: まさに、商品マスター、商品情報、そして商品点数の拡張といった、現代の物流と小売りに欠かせないデータ基盤の議論ができたかと思います。いかがでしたでしょうか? デマンドチェーン時代の物流を支えるマスターデータについて、少しでも理解が深まったなら幸いです。ご自身の会社でのマスター管理について、課題や工夫している点などがあれば、ぜひコメントで教えてください!より詳しく知りたい方は、ぜひ動画本編もチェックしてみてください!今回の動画は【品番でなく商品マスタ】数字に意味を持たせる必要はない?【デマンドチェーン】%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FUz0zvDSkVLc%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E商品マスター, マスターデータ, デマンドチェーン, サプライチェーン, 物流, ロジスティクス, DX, ネットスーパー, EC物流, 物流効率化, 在庫管理, データ分析, 可視化, 品番, SKU, バージョン管理, データ基盤, 物流コンサルタント