はじめに近年、物流業界ではリーダーやマネージャー層の退職が問題となっています。彼らの持つ経験やスキルが失われることは、組織にとって大きな痛手です。なぜこのような状況が起きるのでしょうか?そして、この課題に対してどのような対策が考えられるのでしょうか?ロジカイギの3人が、この問題意識を共有しつつ、特に「ジョブローテーション」に焦点を当てて議論を深めました。前編の議論を踏まえ、後編ではジョブローテーションを具体的にどのように進め、仕組み化していくかについて、それぞれの視点から語り合います。ジョブローテの進め方と仕組み化今回の動画のテーマは、物流業界におけるジョブローテーションの「具体的な進め方」と「仕組み化」です。単なる人事異動とは異なる教育目的のジョブローテーションの意義、それを阻む壁、そして現場で実践可能な具体的な方法や、新しい技術(生成AIなど)を活用したマニュアル化の可能性、さらには物流における「専門性」の捉え直しに至るまで、多岐にわたる議論が展開されました。伊藤: 前半では、リーダーやマネージャーの退職がなぜ起きるのか、その背景にある属人化の問題や、その対策としてジョブローテーションが重要だよね、という話をしましたね。後半は、じゃあ具体的にどうやって仕組み化していくか、というところに焦点を当てていきましょうか。まずは長井さん、どう思われますか?長井: そうですね。正直、物流会社ってジョブローテーションがまだそれほど根付いていないイメージがあります。まず大前提として、ジョブローテーションは基本的に社員の教育のために行うものです。人事異動は組織のために人を動かす話なので、この二つは全く別のものだと理解することが大事です。例えば、物流現場だけでなく、営業やIT分野が得意な人もいる中で、ずっと同じ作業だけをやらせるわけではない。会社として、働く人に自社の様々な可能性を知ってもらう、そのための体制づくりが必要だと思います。これができている会社がどれだけあるかな、と感じています。伊藤: 確かに、その切り分けは大事ですよね。どちらも大事ですが、中間を選べるといいですよね。どうしても荷主さんとの関係性が個人の経験やコミュニケーション能力に依存する世界なので、そこは変えられない部分もある。でも、ジョブローテーションによって、例えばすごく良かったAさんがいなくなっても、BさんにはBさんの良さがある、というバックグラウンドを作るためのジョブローテーションであれば良いと思うんです。そのためには、どういう研修や実務を経験させるのか、仕組み作りが必要でしょうね。以前付き合いのあった上場企業の中には、上場前に教育コンサルタントを入れて、人事異動やジョブローテーション、評価体制などを一気に作り上げていた会社が何社かありました。スペシャリストの力を借りてでも、そうしたベースを作っていくことが大事だと思います。単に研修を入れるだけで済む話ではない。結構長いスパンでの人材育成と考えないといけないですね。小橋: そうですね、結局は会社としてそれを大切にしているか、「人を動かすんだ」という強い意思がないとなかなか仕組み化されないと感じます。ジョブローテーションと言っても、実際には人手不足の現場を補うために一時的に人を動かしているような、余裕のない運用になっているところが多いのが正直なところです。半ば強制的にでも、そういった取り組みを進めていく必要があるのかなと。具体的なやり方としては、いきなり大きく変えて大問題になるのは避けたいので、サブ担当者制のようなやり方が有効だと思います。ある担当者の仕事にもう一人サブ担当者をつけて、そのサブの人に少し仕事を回してみる。少しずつ人を変えてみて、「この人ならできるけど、この人だとできない」といった問題点を分散化しながら洗い出す。これは、その仕事が人に依存しているのか、誰がやってもできるようにマニュアル化されているのか、ということを人を変えることで見えてくる部分があるからです。現場でよく話す例として、トヨタの改善方式があります。大野耐一さんの本にも書かれているそうですが、例えば10人でうまく回っていた部署をあえて8人にする。負荷をかけるわけです。そうすると、問題が必ず起きます。その2人減ったことで起きた問題を潰せば、8人でも回せるようになる。あえてストレッチさせて問題点を炙り出すやり方です。ジョブローテーションも、人を動かすという点ではある種のリスクを伴いますが、それをお客様に迷惑をかけないように、そこで起きた問題を早期に解決しながら体力(現場力)をつけていくイメージでしょうか。課題を見つけようとしても見つからない時や、長くやりすぎると見えなくなることがあるので、あえてそういうルールや体制を経営者として組んでしまう。「ジョブローテーションを絶対やるぞ」という中で見えてくるものもある。それぞれの改善技術はもちろん学ぶ必要がありますが、そういった判断は経営者として行うべきかもしれません。小橋: 物流現場はどうしても変化を嫌う傾向がありますね。昨日までできていたことを変えたくない、教育もやりたくない、という話になりがちです。でも、荷主さんの都合で仕様変更が入ったりして、受け身で変化に対応していくのは疲れる。それならば、最初から会社として「ジョブローテーションによってどんどん現場を変化させていくからね」という前提にしてしまった方が、マインドセットとしては良いのかもしれません。伊藤: 確かに、それはありますね。話は少し変わりますが、マニュアル化の話が出たので。最近、これ使えるんじゃないかと思っているのが、生成AIを活用したマニュアル作成です。これまでは、優秀なスペシャリストにインタビューしたり聞き取ったりして、それを体系化してマニュアルにする、というやり方でしたが、これって相当労力がかかるんですよね。最近試しているのが、例えばZoomで一人で話すんです。(友達がいないわけじゃないですよ、小橋さんや長井さんは友達だと思ってますから!)Zoomの録画機能や、それを要約してくれる無料アプリなどがあります。今日の業務内容や考えていることなどをペラペラ喋る。すると、意外と良い感じにまとめてくれるんです。これってもう、録画するだけでマニュアルの叩き台ができる時代になったんじゃないかと。例えば、小橋さんに「物流コンサルってどういうことに気をつけてるんですか?」みたいなことを話してもらいながら録画する。それを要約アプリにかけると、ある程度まとまる。それを何回か繰り返して、例えば10時間分の音声データや文字起こしデータを生成AIに投げて、「物流コンサルの仕事として定義してまとめてくれ」と依頼すると、意外とまとまってくる気がするんです。ゼロからマニュアルを作るのは本当に大変なので、こういった技術を使って、まずは叩き台を作る、マニュアル化をもう少し楽にする、ということができるんじゃないかと。それが正しいかどうか、最終的な確認は必要ですが、まずはここまでできれば、次のステップに進めますよね。長井: そうですね。どんどん技術的に、今まで人間にしかできなかったような専門性のようなものも、体系化しやすくなってきていると感じます。だから、「これは人間にしかできない」「これが専門性だ」という考え方自体も、少し疑ってかかる必要があるかもしれないですね。ジョブローテーションをすると専門性が失われる、という議論がよくありますが、本当の意味での物流の専門性とは、様々な会社や現場を見てきて、本来どうあるべきかを体系的に学んでいくことだと僕は考えています。一つの荷主のことだけを知り尽くすというのは、どこまでいっても属人化の延長ではないかと。僕自身もコンサルになって様々な現場を見るようになって、独立前の自分と比較すると、やはり限られた情報の中で判断していたな、と感じます。色々なものを見ることで、何が正しいか、何をした方が良いか、といった判断力は、経験の数や視野の広さによって培われる。特に物流は、何か新しい価値を生み出すというよりは、「こういう場合どうしたらいいんだ?」というトラブル対応や判断力が求められる場面が多いので、そういった意味でも色々な経験をすることは必要だと思います。荷主さんが求めているのは、最初は自社の商品のことやサービスに柔軟に対応してもらうことかもしれませんが、その次に必ず来るのが、「それを踏まえた上で、物流のプロとしての意見をください」ということなんです。それに応えられるようになるための施策としてジョブローテーションを組めば、チームとしてプロフェッショナルな提案ができるようになる。ソリューションを学ぶためのジョブローテーション、それが最終的に荷主さんへの価値還元につながる、という形になれば良いですよね。伊藤: なるほど、ソリューションを学ぶためのジョブローテーション、という捉え方はすごく良いですね。それが荷主さんへの価値還元につながる。まとめ今回は、物流業界におけるジョブローテーションの具体的な進め方や仕組み化について議論しました。ジョブローテーションの目的は、社員の教育と成長にあり、単なる人事異動とは区別すべきである。仕組み化のためには、会社としての強い意思と、変化を厭わない姿勢が重要。具体的な導入方法として、サブ担当者制や、あえて負荷をかける(人数を減らす)ことで問題点を炙り出すトヨタ式改善手法などが考えられる。生成AIなどの技術を活用することで、マニュアル作成などの仕組み化に必要な作業を効率化できる可能性がある。物流における専門性とは、特定の業務の知識だけでなく、多様な現場経験を通じて得られる体系的な知見や判断力であり、ジョブローテーションはむしろその専門性を高めることにつながる。荷主は最終的に、物流のプロとしてのソリューション提案を求めており、ジョブローテーションはそのための人材育成施策となり得る。リーダー層の退職という課題は決して他人事ではありません。ジョブローテーションを教育・成長の機会と捉え直し、仕組み化を推進していくことが、組織全体の現場力向上と、ひいては荷主への提供価値向上につながるでしょう。今回の議論はいかがでしたでしょうか? 皆さんの会社では、ジョブローテーションや人材育成についてどのような取り組みをされていますか? リーダー・マネージャー層の退職という課題に対し、一緒に考えていけたら幸いです。ぜひコメントでご意見をお聞かせください。今回の動画は、【ジョブローテ】具体的にどうやればいいのか?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FpgrP7x_ioSM%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eジョブローテーション, 物流業界, 仕組み化, 人材育成, 専門性, マニュアル化, 生成AI, ロジカイギ, 物流コンサルタント, 改善, 現場力, 属人化, リーダー育成, キャリア形成