はじめに昔ながらの倉庫管理から最新のクラウド連携、そして話題のAPIまで、WMSはどのように変貌を遂げてきたのでしょうか?その進化の過程と、今後の可能性について深く掘り下げます。「在庫管理」だけじゃない!変化する役割とAPIの可能性伊藤: 皆さん、本日はWMSの進化について語り合いましょう。最近、WMSもまた少しずつ変わってきているという話が出ましたが、長井さん、システム開発の視点から見て、WMSはどのように変わってきていると感じますか?長井: そうですね。10年、20年前のWMSというと、やはり在庫管理と場所管理が主な役割だったと思います。しかし、現代ではそれだけでは多くの企業の戦略に対応できなくなってきています。小橋: まさにその通りだと思います。僕が20年ほど前にアパレルのBtoB倉庫にいた頃は、WMSという概念自体があまりありませんでした。どちらかというと、お客様の基幹システムの在庫管理機能の延長で、倉庫にパソコンを一台置いて、ドットプリンターでピッキングリストや送り状を出力するようなイメージでしたね。伊藤: なるほど、基幹システムの延長線上だったんですね。それがECの台頭によって、WMSが注目を浴びるようになった、と。小橋: ええ。ECが出てきて、基幹システムと連携しないといけない、ロケーション管理もしないといけない、ということでWMSがハブ的な要素を持つようになったんです。入荷、出荷、在庫の調整、ECからの注文情報と個人情報の連携、最近ではOMS(注文管理システム)を挟んで在庫を一元化したり、配送業者との連携、RFIDやロボットとの連携など、その役割は多岐にわたっています。長井: まさにそうですね。本来は在庫管理と物の出し入れ、ロケーション管理がメインだったものが、今や情報連携のハブになっている。販売管理はお金の管理、WMSは物の管理と、本来異なる流れを扱うシステムが連携することで、消費期限管理など、さまざまな制約条件に対応する必要が出てきて、WMSは非常に奥深いものになっています。しかし、それをちゃんと理解して設計できる人が意外と少ないと感じています。伊藤: 繋ぐべきシステムも多岐にわたりますよね。ERP、ECカート、場合によっては海外の配送業者と連携する必要も出てくる。小橋: 本当に、繋ぐたびに悩むんですよね。「繋ぐんでしょ?繋がって当たり前でしょ?」と言われることが多いですけど、裏側では商品マスターをきちんと揃えるだけでも大変な作業なんです。特にフロント側(ECサイトなど)と直接繋ぐとなると、バックエンドの都合を考えてくれないことが多くて、仕様はコロコロ変わるし、物流に必要な情報が不足していることもあります。長井: そこをOMSが担う部分もありますが、最近はまたWMSと直接連携するケースも増えていますから、常に新しいことに挑戦しなければいけませんね。システム担当者にとっては共感しかない話だと思いますが、そうでない方には「何の話?」となってしまうかもしれませんね。伊藤: 当時のWMSは、例えるなら図書館システムのようなもので、本のバーコードと場所が分かれば十分だった。現場の感覚としては、今でもその延長線上にあるかもしれません。そこに、ERPやWCSなど様々なシステムとの連携が必要になり、さらに「API」という魔法の言葉が出てきて、「何でもできるじゃん!」というイメージが先行してしまっている。長井: ええ、APIは確かに便利ですが、APIのリファレンスだけでは繋がらないことが多いんです。インターフェースを繋ぎ込んでも、現場にその情報がない、という一言で全てが覆されることもあります。システムだけが先行して、現場の運用と合っていないために、いつまで経ってもシステムが活用しきれないという課題はよくあります。小橋: 在庫が合わなかった時に、原因を特定するのも大変ですよね。上位システムでは理論在庫がマイナスになっているのに、現物はもちろんマイナスにはならないですから。伊藤: 本当にそうですよね。上位システムにWMS連携させてください、仕様を教えてくださいと言われても、「いやいや、そのAPIじゃ足りないんですよ!」となることもあります。APIの先には必ず人がいて、現場の運用を考慮したシステム構築が不可欠なんです。まずは現場の運用があって、それに合わせてシステムを構築していく、という考え方が重要だと思います。長井: データ連携においても、作業者が作業しやすいようにWMS側で工夫が必要です。単純にデータを受け取って在庫を引き当てるだけでなく、例えば配送業者ごとにデータを分けて出力したり、重たいものを先にピッキングするように指示を出したりするなど、細かい配慮が重要になります。伊藤: まさに、WMSの要望自体が進化しているということですよね。以前は基幹システムにくっついていたものが独立し、倉庫業務に特化したシステムになり、請求システムなどが連携するようになりました。それがクラウド化によって、荷主自身がリアルタイムで在庫を確認したり、管理したりできるようになり、さらに使いやすいUIへと進化しています。小橋: 荷主側がWMSにログインして、キャンセルや変更などを自動的に行えるような、より利便性の高いシステムも出てきていますよね。伊藤: そうですね。以前はECで注文キャンセルが発生した場合、WMSに引き渡し後だと、現場が倉庫内で該当の商品を探し出して止めるという、非常にアナログな対応が必要でした。しかし最近では、WMS側でもそうした制御ができるような仕組みが出てきていると感じます。より柔軟性が求められるようになったということでしょうね。長井: 今後は、購入者自身が30分以内であればキャンセルできるような仕組みが当たり前になるかもしれません。しかし、それが現場の負担にならないように、上位システムとの連携をさらに強化していく必要があります。小橋: コロナ禍以降、現場の見える化と上位システムの連携は特に試行錯誤されていると感じます。将来的には、より柔軟でスピーディーな物流が実現できると期待していますが、現場の苦労はなかなかなくならないのが現状ですね。伊藤: だからこそ、私たちのような物流コンサルタントがシステムの方に寄り添って、荷主さんにとってより良い仕組みを一緒に開発していくことが重要だと感じます。WMSは進化し続ける!現場とシステムをつなぐ架け橋へ今回の対談では、WMSが単なる在庫管理システムから、多様なシステムと連携し、サプライチェーン全体を最適化するための重要なハブへと進化してきた過程が明らかになりました。クラウド化やAPI連携といった技術革新は、WMSに新たな可能性をもたらしましたが、その一方で、現場の運用との乖離や、システム間の複雑な連携といった課題も浮き彫りになりました。今回の記事を読んで、WMSの進化についてどのように感じましたか?現場での課題や、今後のWMSに期待することなど、ぜひコメント欄で教えてください。今回の動画は、【WMSの進化】WMSのこれまでと現在、APIで魔法使いになれるのか?%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FDevS6OGEAJU%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3EWMS, 倉庫管理システム, API, クラウド, EC物流, 在庫管理, ロジカイギ, 物流コンサルタント, 業務効率化, 自動化, 物流効率化, サプライチェーン, システム連携, ロジスティクス, 倉庫業務, DX